〒803-8505 北九州市小倉北区金田1丁目3番1号

整形外科・スポーツ整形外科/骨粗しょう症センター/人工関節センター

「いつまでも自分の足で歩くために」

超高齢社会が進む中、運動器疾患の治療は益々重要になってきています。
多くの高齢者が抱える運動器の障害を取り除き、より快適で充実した生活を提供することが、我々整形外科医にとって最も重要な使命です。
整形外科の治療は、手術だけではなく、手術以外の治療も近年著しく進歩してきています。骨・関節や筋肉の痛みに対する治療、運動機能の低下に対しての対応をどのように取り組むか、常に患者さんとよくお話しをして、病状を十分理解していただき、治療を行っていきたいと思っています。

当科の特徴1;骨・関節の痛みを改善します。
関節外科全般(特に、人工関節、骨切り手術、関節鏡手術、など)、外傷、など
当科の特徴2;運動器の質を改善します。
骨代謝・骨粗鬆症、サルコペニア、小児整形外科など

得意分野と対象疾患

人工関節 当院では特に人工関節の手術数が増えています。
人工股関節では、個々にあった手術方法(アプローチ)選択を駆使し、筋腱に対する低侵襲を心がけるとともに、最新デザインのインプラントを選択し、骨への低侵襲も心がけています。人工股関節の合併症の一つである脱臼に対しては、手術方法の工夫だけでなく、脱臼率の極めて少ないインプラント(Dual mobility construct)を使用しています。
人工膝関節は、従来の全置換型だけでなく、単顆型(部分置換)の手術も取り入れています。また患者さん固有の骨形態にあったガイド(患者適合型手術支援ガイド)を用いた手術も導入しています。
人工足関節は、外側から置換するより関節形態にあわせた新しい機種を導入しています。
肩関節・肘関節などの人工関節置換術の手術も積極的に行っています。

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関節温存治療 膝関節、股関節、足関節では、骨切り術など人工関節以外の関節温存手術を、年齢や活動レベルに応じて選択しています。
肩関節では、関節鏡視下腱板縫合術を積極的に行っています。
足の外科では、麻痺性疾患で装具療法やリハビリの治療に難渋する症例に対して、従来からある整形外科的手術療法を見直し、積極的に行っています 。
肥満による下肢関節症は、肥満を改善することも重要です。肥満への積極的介入による保存療法も導入しています。
骨粗鬆症 骨粗鬆症を、「生活習慣病」のひとつとして捉え、「骨卒中」といわれる脆弱性骨折を起こさないよう、積極的に啓蒙し、治療を行っています。また糖尿病や大量飲酒、喫煙など、従来の生活習慣病から引き起こる続発性骨粗鬆症を見つけ、当院独自のデータや最新の基礎研究の知見を踏まえて、最適な治療方針を提供しています。
骨粗鬆症による圧迫骨折や脆弱性骨折にも、出来る限り侵襲の少ない治療を提供し、骨折再発予防にもきめ細かく対応しています。

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スポーツ外傷・障害 サッカーやラグビーなどのトップレベルチームでの帯同ドクター経験から、予防を含めたスポーツにおける外傷・障害全般に対応します。
関節鏡視下手術も経験豊富です。
運動器外傷 すべての骨折や軟部組織損傷に対応します。
小児整形外科 近年、小児整形外科の経験がある医師が少なくなっています。当院では先天性股関節脱臼、先天性内反足、O脚、うちわ歩行など、主に下肢小児疾患の治療経験豊富な医師が在籍しています。(電話で問い合わせ下さい)
また小児の外傷・骨折にも積極的に対応しています。
脊椎外科 脊椎圧迫骨折は、疼痛管理とともに原因となりうる骨粗鬆症の治療に力をいれており、独自のコルセットを開発したり、早期診断方法の研究にも取り組んだりしています。
手術が必要になる場合は、早期復帰を目指し、低侵襲な手術を心がけています。
治療方法の例
○以下のような症状がありませんか?

・動き始めが痛い
・階段の上り下りが痛い
・曲げると痛い
・しゃがみこめない
・脚がまっすぐに伸びない
・O脚になる
・ゴリゴリと音がする
・出歩くのがおっくうになる
・旅行に行かなくなった
・運動をするように言われたが痛くて出来ない

○痛みの原因は?

〈 変形性関節症 〉
膝や股関節では、骨の表面は軟らかい軟骨で覆われています。軟骨は衝撃を吸収するクッションのような働きを
しています。軟骨のクッション機能が衰えて軟骨がすり減り、さらに悪くなると軟骨の下にある骨がむき出しに
なり痛みがとれなくなります。
痛みの原因

〈 関節リウマチ 〉
免疫系の異常により、関節の腫れや痛みを引き起こす疾患です。進行すると関節が破壊され、様々な程度の
機能障害を引き起こします。

〈 骨壊死 〉
骨粗鬆症に伴う骨折や薬の影響(ステロイド)などが原因で膝の骨が壊死し、関節が壊れてしまい
痛みを生じます。

〈 半月板損傷 〉
半月板は膝の大腿骨と脛骨の間にあり、クッションの役割をしています。損傷して切れた部分が骨の間に
引っかかったり、引っ張られるような形になると痛みが生じます。
半月板損傷

〈 股関節唇損傷 〉
股関節は骨盤と大腿骨で出来ており、骨盤側は丸い半球状の受け皿(いわゆる調理用の“ボール”)のように
なっています。その周囲には関節唇という、パッキンのような役割をしている組織があり、そこを傷めると大腿骨
との間に挟まったりして痛みが生じます。
半月板損傷

〈 肩腱板断裂 〉
肩の中には「腱板」という小さな腱の集合体があります。腱板は、上腕骨の骨頭を肩の受け皿(関節窩)に引きよせ、受け皿の真ん中でスムーズに動くように調整しています。また腕を上げたり、捻ったりする作用もあります。 この腱が外傷や経年変化によって切れてしまうと、肩の痛みが出現します。

○どういった治療法がありますか?

 まずは鎮痛剤や注射、リハビリなどの治療を3ヶ月くらい行うことが一般的ですが、半月板損傷や関節唇損傷では
早期に修復した方が良い場合もありますので一概には言えず、痛みが続く場合は適切な診断を行うことが重要で
す。専門医の診察をうけるかどうかの目安は、薬や注射、リハビリなどの治療を3ヶ月以上しても症状が
よくならない場合がひとつの目安となります。

薬:通常の鎮痛剤や湿布の他に、より効果のある内服薬や湿布・外用剤などもあり、それらを状態に合わせて
使用します。骨粗鬆症がある場合は骨粗鬆症治療を行うことによって、痛みが良くなることもあります。

注射:ヒアルロン酸の関節内注射を行います。関節の炎症を抑える効果があります。

リハビリ:膝・股関節など下肢の関節では、可動域訓練(動きを良くする訓練)、腸腰筋、中殿筋、大腿四頭筋
やハムストリングス、下腿三頭筋などの筋力訓練を指導します。
肥満は下肢の関節には百害あって一利もありません。しかし関節の負担を減らそうと単純に体重を減らそうとし
ても、偏った知識や方法では有効に減らすことは難しく、かえって体組成を狂わせ、関節の症状を悪化させること
もあります。
肥満による下肢関節症状が明らかにある場合、体組成を悪化させないように管理しつつ下肢関節への負担を軽減さ
せることも必要です。
(当院では患者さんの背景や病状を十分考慮して、厳重な医学的管理のもと、栄養士による栄養指導と理学療法士
による運動療法を同時に行うことで、肥満改善による積極的保存療法も行っています。詳しくは整形外来にお問い
合わせください。)
肩関節では、動かした時の痛みが主になると徐々に関節が硬くなってくるため(可動域制限)、理学療法や肩への
注射などで、スムースに動かせるようにする治療が重要になります。

手術:当院では人工関節置換術(THA、TKA)だけでなく、患者様の状態に合わせて関節鏡手術、骨軟骨移植術、
人工膝関節単顆置換術(UKA)、骨切り術(RAO、HTO)なども行っており、適切な方法を選択しています。手術
を受けられる患者さんの年齢および足の形態もすべて異なっております。細かな手術方法は患者さんの手術前の関
節機能や生活を考慮して決める、いわゆるカスタムメイドの手術を心がけております。また、肩腱板損傷では積極
的に関節鏡視下手術を行います。関節鏡視下手術のメリットには、傷が小さく、筋組織の損傷が小さいことで、最
近では診断も修復も正確かつ強固に出来るようになりました。手術後のリハビリが重要であり、理学療法士ととも
に行っていきます。

主な検査

単純レントゲン、ヘリカルCT、MRI(1.5T)、超音波検査、骨密度測定、トモシンセシス、ミエログラフィー、神経根ブロック、神経伝導速度、ABI・PWV検査、骨シンチグラム検査などが可能です。

その他

疫学研究・臨床研究に関する情報の公開について

  • A) 慢性閉塞性肺疾患患者における骨粗鬆症・骨代謝に関する研究
  • B) 定量的CTを用いた有限要素法による骨強度予測評価
  • C) 大腿骨ステム周囲骨折に対する治療成績 多施設共同後ろ向き研究
  • D) 原発性骨粗鬆症患者に対するゾレドロン酸水和物投与における非ステロイド性抗炎症薬のAPR発現抑制効果を検証する多施設共同ランダム化比較試験(OZ study)
【指導医、専門医】
  • • 日本整形外科学会専門医:3名
  • • 日本整形外科学会認定リウマチ医:2名
  • • 日本整形外科学会認定スポーツ医:2名
  • • 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医:1名
  • • 日本整形外科学会運動器リハビリテーション医:1名
  • • 日本リウマチ学会専門医:1名
  • • 日本体育協会スポーツ認定医:2名

医師紹介

森 俊陽
(もり としはる)

診療部長/リハビリテーション部長

所属学会

日本整形外科学会
専門医
日本体育協会
公認スポーツドクター
日本股関節学会
 
日本人工関節学会
 
日本小児整形外科学会
 
日本リウマチ学会
 
日本足の外科学会
 
日本臨床バイオメカニクス学会
 
日本臨床スポーツ学会
 

松本 康二郎
(まつもと こうじろう)

整形外科部長/人工関節センター長

所属学会

日本整形外科学会
専門医
日本人工関節学会
  
日本骨折治療学会
  

島田 佳宏
(しまだ よしひろ)

所属学会

日本整形外科学会
専門医 認定リウマチ医 認定スポーツ医
 
認定運動器リハビリテーション医 認定脊椎脊髄病医
日本体育協会
公認スポーツドクター
日本人工関節学会
 
日本骨折治療学会
 


人工関節センター

現在日本全国で変形性関節症を患っているかたは125万人以上とも言われ、65歳以上の女性の3人に一人は関節痛に悩んでいるとも言われています。またロコモティブシンドロームの一つの要因となる変形性関節症は、悪くなれば日常生活に支障が出るだけでなく、糖尿病や高血圧など生活習慣病を含めたさまざまな病気を呼び込むことになりかねず、いわゆる「健康寿命」を短くさせてしまいます。

昨今、この変形性関節症の治療に大きな役割を占めているものに人工関節置換術という方法があります。自分の傷んだ骨や軟骨を取り除き、金属やポリエチレンなどの人工物で関節を再建する方法です。人工関節は、関節鏡の発明とともに、20世紀における整形外科の最も輝かしい業績の一つといわれています。1800年代終盤に行われた中間層入膜による関節形成手術が人工膝関節の開発の始まりといわれています。その後、様々な素材や形状により開発がなされましたが、半世紀以上はなかなかうまくいきませんでした。せいぜい数ヶ月、もって2年という程度でした。しかし、1960年代に英国のSir John Charnleyが、high density polyethylene (HDP)と金属を用い、骨セメント(polymethyl methacrylate; PMMA)を固定に使用した人工股関節の開発に成功し、このことが人工関節の開発・普及に大きな貢献を果たしました。Charnleyが開発した方法は、使い方によっては10年以上、なかには30年以上も持つかたもいました。

それでも私が医師に成り立てだった20数年前は、耐用年数の問題から、人生80年と考えて60歳以上になるまでは積極的に人工関節手術を勧めることはありませんでした。しかし現在では、人工膝関節、人工股関節ともに平均20年を越す耐用年数のものも珍しくなくなり、最初に「きちんとした手術」さえ受けていれば、万が一20年経過時に再置換が必要になっても、「きちんとした再置換手術」を行うことで、理論上40年を越して人工関節を使用することも不可能ではない時代になりました。

「きちんとした人工関節の手術」を受けていただくためには、今もなおその精度を上げるべく改良がなされています。切開する部分を適切に最小限にするMISや、人工関節を正確に設置するためのナビゲーションシステム、3次元立体モデルを使用した方法(PSI)、さらには生理的な関節の動きをさせるためのインプラントの改良(BCS-TKAやDual mobility THA)など、微に入り細に入り、医学の進歩とともに改良、工夫を行っています。

当院では平成30年4月より、人工関節をより専門的にうけていただくために「人工関節センター」を設置しました。悩ましい関節痛から劇的に解放されることを願って、人工関節を中心とした最適な治療方法を科学的根拠に基づいて選択し、幅広く提供してまいりたいと考えております。階段の上り下り、車の乗り降り、家事、買い物、お孫さんの世話、旅行や遠出など、関節を動かすことでつらいことがあれば、いつでもご相談ください。また人工関節の適応だけでなくても、適切な関節維持の方法などもアドバイスいたします。

(股関節、膝関節、肩関節、足関節、肘関節、などすべての関節に対応します。)

人工関節センター長 森 俊陽

治療方針の例

変形性股関節症

変形性股関節症では股関節の軟骨が摩り減って関節が変形していく病気です。はじめは股関節に時々痛みがある程度ですが、徐々に痛みを感じる時間は長くなり、徐々に歩けなくなります。靴下の着脱、足の爪切り、和式トイレの使用等も困難になります。

保存治療

痛み止めの内服と、杖の使用が効果的です。初期には股関節を支える力を落とさないようにするため、お尻(中殿筋)や体幹のトレーニングも必要です。

手術治療

病気が進み、痛みのコントロールがうまく出来なくなった時に手術治療をお勧めしています。変形して合わなくなった股関節の適合性を改善させる「骨切り術」と、人工の関節に置き換える「人工股関節置換術」という手術方法があります。どちらの手術でも関節の動きは改善され、痛みも改善されます。近年では、人工股関節全置換術を受けた95%以上の人が、少なくとも手術後15〜20年間入れ替えの必要なく生活出来ます。当院では人工関節の経験豊富な医師が在籍するため、あらゆるアプローチ、手術法を選択でき、また症例に応じて皮膚や筋肉の切開部分が最小限になるよう低侵襲な人工関節置換術を心がけております。当院では簡易ナビゲーションシステムを導入し、症例に応じて使用しています。このシステムで、より正確な人工関節の設置が可能になります。また、人工股関節の合併症の一つである脱臼に対して、手術方法の工夫だけでなく、脱臼率の極めて少ないインプラント(Dual mobility construct)を取り入れることで限りなく脱臼率を下げるよう努めています。

当院の人工股関節について
変形性股関節症

人工股関節は、大きくは、臼蓋カップ、ポリエチレンライナー、骨頭ボール、大腿骨ステムから成り立ちます。臼蓋カップと大腿骨ステムは、特殊な表面加工された金属を直接骨に固着するように挿入します(セメントレス)。
現在使用している加工方法(プラズマスプレーコーティング)のものは、20年以上挿入されていても全く固着性の損失を認めません。現在20年以上の固着を観察しつづけています。
ポリエチレンライナーと骨頭ボールは、人間の正味の関節部分にあたり、摺動面と言われます。この部分の素材の組み合わせは、過去様々な試みがなされてきました。現在、主に使用される素材としては、骨頭ボールは金属(CoCr)かセラミックが主です。ライナー部分はポリエチレンかセラミックですが、現在最も多い組み合わせはポリエチレンライナーと金属もしくはセラミックです。金属と金属の組み合わせなども一時期多くありましたが、金属の摩耗や漏出のために生体に問題を生じるケースがあり、現在ではほとんど使用されなくなりました。この素材の選択は、人工関節の寿命を決める最も大きな要因とされています。

アプローチ

人工股関節の手術方法には様々な進入方法があります。大きくは後方アプローチと側方アプローチ、前方アプローチがあります。手術のしやすさ、術者の習熟度など、それぞれの術者でいろいろ繁用する方法は異なりますし、それぞれに利点欠点があります。

当院では主に側方(もしくは前方)アプローチを採用しています。後述する脱臼という合併症の観点からすると、側方アプローチが脱臼しにくいと多くの論文をまとめた解析・報告があります。筋腱温存しつつ、脱臼しにくいアプローチとして採用しています。

インプラントの選択(ステム)

骨に設置するインプラントは主に寛骨臼側と大腿骨側に別れます。大腿骨に挿入するステムにもいろいろな種類(デザイン)と、2つの固定方法があります。

固定方法にはセメントを使用するか、セメントを使用せず、金属表面の加工により直接骨と固着させる方法(セメントレス)があります。セメントはCharnleyの人工股関節の開発・成功に大きな貢献を果たし、中には30年近く使用できているものもあります(1)が、術者の技量による部分が大きいのが難点です。

セメントレスは、術者の技量の差は出にくいですが、骨の形態や骨質が手術の成否や長期成績に依存することがあります。現在使用されているセメントレスステムはほぼ20年以上の良好な固着性を維持できるようになってきているようです。我々が使用し観察をつづけているものも、現時点では固着性に一向に問題が出てきておらず、骨質に問題がなければ、まだまだ使用可能なようです。

上述のようにステムの種類(デザイン)は骨形態や骨質に依存するため、場合により選択する機種を変えることがあります。通常は大腿骨の頭側1/3程度に挿入されますが、長年大腿骨にステムが入っていると、荷重の大腿骨に対する応力分散が独特の様相を呈してきます。それは、主にステムの下側1/2~1/4部分にばかり応力が集中し、その周りの骨だけ強固、肥厚してきます。逆にその部分より上側には力がかからなくなるため、骨が痩せてきます(ストレスシールディング)この現象は、現在の大腿骨にステムを挿入する人工股関節では回避不可能であり、そのため我々は出来る限りストレスシールディングの起こる範囲を狭くしつつ、強固に固着するようなデザインを使用することで、可能な限り骨を温存することを心がけています。20年前にくらべれば、現在使用しているデザインは1/3〜1/2程度まで小さくなっています。

インプラントの選択(カップ)

骨盤(寛骨臼)側にはカップを設置します。大腿骨と同じく、固定方法にはセメント使用と、使用しないセメントレスがあります。骨盤側の固定のセメントカップの成績はステムほど良くないため(2)、セメントレスカップが多く使用されます。

当院ではカップの固定に スクリューを可能な限り使用しないようにし(スクリューレス) 、初期固定性に難があるときのみ、スクリューを使用するようにしています。スクリューの使用は初期固定性を担保してくれますので、手術するものにとっては安心なのですが、再置換の際、スクリューを外そうと思ってもスクリューのネジ穴が潰れていて手術に難渋することとか、スクリュー挿入手技に伴う骨盤内血管損傷の可能性などを考えて、極力スクリューを使用しないようにしています。そのかわりカップに小さなフィンがついたデザインを使用することや、はめ込む骨の採掘処理をわずかに小さくすることで窮屈にはめ込む(プレスフィット)ことで、初期の固定性を担保しています。

摺動面の選択

人工関節の部品同士が接しつつも動く部分を、摺動面と言います。上述のように、この部分にどのような素材を使用するかは、人工関節の寿命を決めると言っても過言ではない最も重要な部分です。骨頭ボールはセラミック、金属(CoCr)、ライナー部分にはポリエチレン、セラミック、金属があります。Charnleyの人工股関節の開発・成功に大きく貢献した要因の一つにポリエチレンの採用がありました。しかし、当初のポリエチレンと金属の摺動面では、徐々にポリエチレンを摩耗し、この摩耗片が人工関節周囲の骨溶解をおこす(3,4)ことが徐々にわかってきました。その後改良が加えられ、放射線処理などを施すことにより、ポリエチレンの強度は上がり、日本でも2003年頃から発売されたHighly Cross-linked polyethylene(HXLPE)は摩耗量が減り、明らかに臨床成績を向上させています。(5-7)現在では、更に生体の酸化ストレスからくるポリエチレンの劣化の影響を受けにくくさせるため、ポリエチレン自体にビタミンEを含浸させ、より長くポリエチレンの強度が落ちないように工夫されたものも使用されるようになっています。

金属と金属の組み合わせは一時期多く使われましたが、金属の摩耗や漏出が生体に問題を生じるケースがあり、現在ではほとんど使用されなくなりました。

現在、主に当院で使用している素材は、骨頭ボールはセラミック(もしくは金属(CoCr))、ライナー部分はポリエチレンです。

脱臼の問題

人工股関節置換術にまつわる手術時期を含めた問題点、合併症はいくつかありますが、特有、かつ解決されていない問題として、人工股関節の脱臼があります。一度脱臼を起こすと習慣性、いわゆるくせになる可能性があります。脱臼すると突然の痛みとともに歩けなくなり、救急搬送を余儀なくされ、病院で整復する必要が生じます。またその後の生活も、また脱臼するのではないかと、非常に不安を持ちながら送ることにもなりかねず、快適な人工股関節の生活が損なわれてしまいます。当院では、この問題をできるだけ起こさないような対策を取っています。

1つ目は、上記に示しました手術アプローチの選択です。

2つ目は、人工関節のデザインの選択です。現時点で明らかになっているものとして、骨頭の大きさとデザイン自体が持つ動く範囲は、脱臼に影響します。しかし、現在多用されている人工股関節では、動く範囲(oscillation angle)には限界があります。そこで、動く部分(摺動面)を2つ設けることで、この動く範囲を大きくすることができます。完全に脱臼がなくなるわけではありませんが、過去の報告の解析から、脱臼の確率が低下したとされています。(8)当然ながら、特有の問題(intra-prosthetic dislocation)や、通常の方法とは注意すべき点が変わるなど、新たな問題点はありますが、脱臼のリスクがさがり、totalでの合併症の発生率がさがるならば、ベネフィットがあると考え採用しています。

3つ目は、骨盤、大腿骨さらには脊椎を含めた生体の動き(可動性)です。このことはまだまだ未解明のことが多く、さらに個人差が大きいため、手術ごとに検討されなければなりません。当院での対策として、手術前の患者さんのCTデータを活用して、想定したインプラント設置位置から股関節の動作シミュレーションを行い、骨やインプラントがぶつかって脱臼する動きをしないか、確認しています。(9) 4つ目は、人工股関節を使用する患者さん自身にどのような動きをしたら脱臼しやすいかを知っていただくことです。これが、何よりも一番の脱臼の予防方法になります。最近は上記のような機械や手術方法の改良に伴い、以前ほど脱臼する確率が減ってきたため、このような情報提供をされない、問題視しない医師も出てきました。しかし、報告されている確率、あるいは理論上もそうですが、絶対脱臼しない、脱臼0%ということは決して言えません。そのためには、有効な方法は一つでも取っておいたほうがよいと私達は考えています。

当院では手術の前後に患者様(およびご家族にも)どのような脚の格好が脱臼しやすいのかを知っていただくために、動画で説明し、勉強していただいています。

参考文献

1. 嶋津大輔, 森俊陽,他 若年者 (50歳以下) に対するCharnley型人工股関節全置換術の長期成績 整形外科と災害外科 64(4): 711-714, 2015.

2. 辻村良賢, 森俊陽,他 Charnley型人工股関節全置換術の長期成績 - 臼蓋側と大腿骨側のインプラント固着性の比較 -整形外科と災害外科 64(4): 708-710, 2015.

3. Dumbleton JH, Manley MT, Edidin AA. A literature review of the association between wear rate and osteolysis in total hip arthroplasty. J Arthroplasty 2002 17:649-61.

4. Orishimo KF, Claus AM, Sychterz CJ, et al. Relationship between poly- ethylene wear and osteolysis in hips witha second-generation porous-coated cementless cup after seven years of follow-up. J Bone Joint Surg Am 2003 85- A:1095-9.

5. Tsukamoto M, Mori T, et al. Highly Cross-Linked Polyethylene Reduces Osteolysis Incidence and Wear-Related Reoperation Rate in Cementless Total Hip Arthroplasty Compared with Conventional Polyethylene at a Mean 12-Year Follow-Up. J Arthroplasty. 2017 Dec;32(12):3771-3776.

6. Devane PA, et al. Highly Cross-Linked Polyethylene Reduces Wear and Revision Rates in Total Hip Arthroplasty: A 10-Year Double-Blinded Randomized Controlled Trial. J Bone Joint Surg Am. 2017 Oct 18;99(20):1703-1714.

7. Mori T, Tsukamoto M. Highly cross-linked polyethylene in total hip arthroplasty, present and future. Ann Joint 2018 3:67-69.

変形性膝関節症

変形性膝関節症も膝関節の軟骨が摩り減って関節が変形していく病気です。はじめは膝に時々痛みがある程度で、徐々に正座や階段昇降、椅子から立ち上がる際に痛みを感じるようになります。経過とともに痛みを感じる時間が長くなり、徐々に歩けなくなります。足も曲がって、O脚になっていきます。

保存的治療

膝関節への負担を減らす体重コントロールと、膝関節周囲の筋力訓練、足底板やサポーターなどの装具療法などがあります。痛み止めの内服や関節内へのヒアルロン酸の注入も有効です。

手術的治療

膝の部分で骨を切って傾きを調整することで、O脚になった下肢の荷重バランスを変え、痛みを改善させる「骨切り術」と、膝関節の傷んだ一部分だけ人工の関節に置き換える「人工膝関節単顆置換術」、さらには膝関節表面の全部を人工の関節に置き換える「人工膝関節全置換術」という方法があります。活動性や膝の状態など、患者さんの状態に合わせて、最適な方法を選択します。どの手術でも関節の動きが改善され、痛みが改善されます。近年では、人工膝関節全置換術を受けた多くの方が、手術後15年間以上入れ替えの必要なく生活されています。当院では、患者さんの膝のCTまたはMRIを利用して、患者様一人ひとりの形にあった手術ガイドを作成し、術中にその手術ガイド(患者適合型手術支援ガイド)を使用することでより正確な手術を行う手技(PSI; Patient Specific Instrumentation)を導入しています。

関節症による膝関節の変形
変形性足関節症

変形性足関節症も膝関節や股関節と同じく、軟骨が摩り減って関節が変形していく病気です。若いときに捻挫を繰り返していたのち、徐々に痛みが出てくることがあります。次第に正座や階段昇降、歩行に痛みを感じるようになります。

保存的治療

痛み止めの内服とともに、膝関節と同様で負担を減らす体重コントロールと、足関節周囲の筋力訓練、サポーターなどの装具療法などがあります。

手術的治療

足関節(距腿関節)表面を人工の関節に置き換える「人工足関節全置換術」という方法があります。これまでは股関節や膝関節ほどの長期成績が報告されていなかったため、関節固定術が主に行われてきました。近年、足関節の形状に合わせたデザインで、骨金属接合面の改良がなされた人工足関節が日本でも使用できるようになりました。当院では新しい人工足関節を積極的に導入し、より生理的な歩行様式を再現できる治療を目指しています

変形性足関節症

関節の老化は、40歳頃にはすでに始まるとも言われています。
また現在日本全国で関節症を患っている方は125万人以上おり、65歳以上の女性の3人に一人は関節痛に悩んでいるとも言われています。(厚生労働省調べ)
ロコモティブシンドロームの原因の一つである関節症は、悪くなれば日常生活に支障が出るだけでなく、内科的な疾患を呼び込むことになりかねず、いわゆる「健康寿命」を短くさせてしまいます。
階段の上り下り、車の乗り降り、家事、買い物、お孫さんの世話、旅行や遠出など、関節を動かすことでつらいことがあれば、いつでもご相談ください。
人工関節の適応ではなくとも、適切な関節維持の方法をアドバイス致します。

骨粗鬆症センター

人生100年時代を迎え、最後まで自分の足で歩くために、骨の健康がなくては成り立ちません。
当院では高齢社会を迎えるに先立ち、平成15年10月にいち早く「骨粗鬆症センター」を立ち上げ、北九州東部の骨粗鬆症治療のメッカとして尽力してまいりました。
骨粗鬆症の一次検診や、二次検診施設としての役割に加え、他院で治療に難渋する症例なども積極的にご相談いただき、最新の治療に取り組んでおります。

骨粗鬆症になって最も問題になるのは、弱くなった(脆弱化した)骨が、若いときには折れるはずのない軽微な力や、尻もちなどで、いとも簡単に骨折してしまうようになることです。
骨粗鬆症は、高血圧や高脂血症、糖尿病と同じく、はじめは全く症状をおこしません。
骨折を起こして初めて骨粗鬆症と診断される方はいまだに多くおられます。
そのためには、早期に骨粗鬆症を発見し、早期に治療を開始することは、極めて重要です。
また万が一、どこかが折れた場合、骨折を治療することは当然として、骨粗鬆症がその背景にある場合、他にも折れやすい場所があることになります。
つまり、二度目、三度目の骨折をおこす危険性があるということです。
そのため一度骨折を起こしたら、同時に骨を正確に評価し、適切な骨粗鬆症治療を開始することが、二度目、三度目の骨折を起こさないようにするために重要となります。

骨粗鬆症の原因として、女性の閉経は非常に有名です。女性ホルモンは骨の健康の維持には不可欠です。
若い中高生が過度な運動のために、生理不順・無月経になり、疲労骨折をおこしやすくなることも、女性ホルモンのアンバランスが原因といわれています。
またカルシウム吸収に不可欠なビタミンD不足は、意外にも日本人に男女問わず多く存在しています。
男性は女性ホルモンとの関与が極めて少ないため、骨粗鬆症とは無縁のように思われがちですが、実は男性にも「かくれ骨粗鬆症」ともいうべき方々がいます。
代表的なもので、喫煙者に多い慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、アルコール多飲、糖尿病は、骨粗鬆症の危険因子と言われています。
タバコやアルコールを摂取出来ているときは、骨粗鬆症として影響を表しませんが、タバコやアルコールを辞めて、10~20年後にCOPDが発症したり肝硬変になったりしたときには、既に重篤な骨粗鬆症を合併しています。



またお酒に弱い体質と言われているアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の不活性型を持つ方は骨粗鬆症の率が高く、またお酒を飲む習慣があるとより骨粗鬆症になりやすいとも言われています。
さらには生活習慣や遺伝的体質だけではなく、生活様式や骨の受ける外力によっても骨粗鬆症に伴う骨折は起きやすさが変わります。
同じ骨密度でも、転倒の仕方や骨の形状の違いにより骨折しやすさの違いを生じることが、3次元CTデータを利用した骨形態の評価によりわかってきています。



以上のような知見を踏まえて、当院の骨粗鬆症センターでは、COPDに伴う続発性骨粗鬆症の病態解明や疫学調査、また3次元CTデータを利用した骨形態による骨折リスクの評価、さらには骨粗鬆症治療を円滑にするための多職種連携によるサービス(Osteoporosis Liaison Service, OLS)の導入など、オリジナリティを持って臨床サイドからの骨粗鬆症病態解明や、最新の骨粗鬆症治療体系の作成を積極的におこなっています。

骨粗鬆症の原因は非常に多岐にわたりますので、過信せずに、一度検診を受けていただくことを、お勧めいたします。

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