関節リウマチと運動|悪化させずに続ける効果・方法・注意点
2026年9月8日

関節リウマチがある方でも、炎症や痛みの状態に合わせて無理のない範囲で運動を続けることは、関節の動きや筋力を保ち、日常生活の質を維持するうえで大切とされています。一方で、痛みを我慢した過度な運動は関節の破壊を進める恐れがあるため、「動かす」と「休む」の見極めが欠かせません。本記事では一次情報をもとに、運動の効果、推奨される運動、急性炎症期の対応、避けるべき動作、関節を守りながら続けるための工夫を整理します。
この記事でわかること3点:
- 関節リウマチがある方にとって運動がもたらす効果(関節可動域・筋力・生活の質)
- 安定期に推奨される運動の種類と、急性炎症期に安静が必要な理由
- やってはいけない過負荷と、関節を守りながら続けるための具体的な工夫
関節リウマチでも運動してよい?まず知っておきたい基本
関節リウマチがある方も、痛みや腫れが落ち着いている時期であれば、無理のない範囲で運動を行うことが推奨されています。「動かすと悪くなるのでは」という不安を持つ方は少なくありませんが、動かないことにもデメリットがあるため、状態に応じた運動と安静の使い分けが大切です。
運動療法は治療の柱のひとつ
公益財団法人日本リウマチ財団によれば、関節リウマチの治療は薬物療法・手術療法・リハビリテーション・ケアの4つが柱とされており、運動療法(リハビリ)はその一翼を担う位置づけです。「関節リウマチだから運動は控えるべき」という一律の考え方ではなく、状態に応じてリハビリテーションを組み合わせていくのが標準的な治療方針です。禁止から入るのではなく、まずは「運動は治療の一部」という前向きな位置づけを知っておくと、日常生活の見通しが立てやすくなります。
「動かす」と「休む」を分けるのが大前提
痛みや炎症の強さによって、運動の可否や適した強度は大きく変わります。基本的な考え方は次のとおりです。
- 痛みや腫れが落ち着いているとき:無理のない範囲で運動を継続
- 痛みや腫れが強いとき(急性炎症期):運動量を減らして安静を優先
この判断軸を先に押さえておくことで、以降のセクションで紹介する具体的な運動方法や避けるべき動作を、状況に応じて使い分けやすくなります。
運動がもたらす3つの効果(関節可動域・筋力・生活の質)
関節リウマチの方が運動を続けることによる代表的な効果は、①関節可動域の維持、②筋力低下の防止、③生活の質(QOL)の維持、の3つです。これらは互いに関連しており、一つの効果だけでなく総合的に生活を支える意味があります。

関節の動き(可動域)を保ち、こわばりや拘縮を防ぐ
日本リウマチ財団の情報によれば、リウマチの運動療法は関節可動域の獲得・維持を目的の一つとして行われており、ストレッチやリウマチ体操が拘縮予防につながるとされています。
関節を動かさない時間が長く続くと、関節の周りの組織が硬くなり、動かせる範囲(可動域)が徐々に狭くなっていきます。無理のない範囲で関節を動かし続けることは、日常動作を保つうえで役立ちます。
筋力の低下を防ぎ、関節を支える
安静が続くと、筋力は短期間で低下します。日本リウマチ財団の情報によれば、動かないことそのものが機能低下のリスクにつながることが説明されています。 関節そのものを守るためには、関節を取り囲む筋肉のはたらきが欠かせません。適度な運動で筋力を保つことは、結果的に関節への負担を軽くすることにもつながります。「動かさないほうが安全」という一律の判断ではなく、動かないことのリスクも知っておくことが大切です。
痛みや疲労感を和らげ、生活の質(QOL)を保つ
運動を続けることは、身体面だけでなく気持ちの面での効果もあるとされています。水中運動のリラクゼーション効果や、体を動かすことによる気分転換は、慢性的な症状と付き合っていくうえでの支えになります。 もちろん、運動によって痛みが必ず和らぐわけではありません。しかし、日常生活の質(QOL)を維持する手段として、運動が果たす役割は決して小さくありません。
安定期に推奨される運動の種類と取り入れ方
関節リウマチが安定している時期に推奨される運動は、①等尺性運動、②ストレッチ・リウマチ体操、③水中運動、④軽い有酸素運動、の4タイプに分けられます。それぞれ目的や関節への負担が異なるため、自分の状態や好みに合わせて選んでいくのが実践的です。
安定期に推奨される運動タイプの比較
| 運動の種類 | 主な目的 | 関節への負担 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 等尺性運動 | 筋力を保つ | 少ない | 痛みが気になる時期 |
| ストレッチ・リウマチ体操 | 関節の動きを保つ | 少なめ | 入浴後など、あたたまった後 |
| 水中運動(プール) | 関節保護と有酸素 | 少ない(浮力で軽減) | 歩行が難しい方にも |
| 軽い有酸素運動(ウォーキング等) | 心肺機能を保つ | 中程度 | 痛みのない範囲で |
関節をあまり動かさず筋力を保つ「等尺性運動」
等尺性運動とは、関節を大きく動かさずに筋肉に力を入れる運動のことです。たとえば、手のひらで壁を押す、握りしめる、太ももに力を入れて椅子から少し腰を浮かせるといった動作が該当します。 日本リウマチ財団の情報でも、関節を動かさずに筋力を保つ運動として等尺性運動が紹介されており、リウマチの方の運動療法における基本のひとつです。関節への負担が少ないため、痛みが気になる時期にも取り入れやすい運動です。
関節の動きを保つストレッチ・リウマチ体操
関節を温めた後(入浴後など)に行うストレッチやリウマチ体操は、関節の動きを保つのに役立ちます。日本リウマチ財団の情報によれば、少し痛い程度なら無理のない範囲で動かすことが推奨されていますが、我慢はしないことが原則です。 手指・手首・肩・膝など、部位ごとに無理なく動かす体操が紹介されています。詳しい動きは、主治医や理学療法士と相談しながら、自分に合った方法を選んでいくことが大切です。
浮力で関節を守る「水中運動・プール運動」
水中運動は、水の浮力で関節への負担が軽くなるため、痛みが出にくく関節保護になる運動です。歩行が難しい場合でも、水中では体重の負荷が減って動きやすくなります。 さらに、水中運動は有酸素運動としての側面も持っており、心肺機能を保つのにも役立ちます。関節保護と有酸素運動を両立できる点で、リウマチの方に向いている運動の一つといえます。
軽い有酸素運動(ウォーキングなど)の取り入れ方
痛みのない範囲でのウォーキングや、弾みをつけないヨガ・太極拳なども、選択肢に含まれる運動です。専門医療機関の解説でも、無理のない範囲での有酸素運動が紹介されています。 大切なのは「少しずつ・無理せず・翌日に疲れを残さない」ことです。距離や時間にこだわりすぎず、自分のペースで続けられる形を優先してください。
痛みや炎症が強いとき(急性炎症期)の対応
痛み・腫れ・熱感が強い急性炎症期には、運動量を減らし安静を優先します。「毎日運動を続けなければ」という気持ちが先に立つと、かえって関節を痛めてしまうことがあります。状態のサインを見ながら休むことも、運動療法の一部です。
関節の腫れ・熱感が強いときは運動量を減らす
日本リウマチ財団の情報によれば、関節痛が何時間も続いたり腫れが増したりした場合は、運動量を減らすことが推奨されています。関節に熱感がある急性炎症のときは、無理に動かすと炎症を強めてしまう可能性があります。 熱感のある急性炎症の関節に対しては、局所的に寒冷療法(冷やす)が用いられることもあります。ただし、自己判断で長時間冷やし続けるのは避け、方法や時間の目安については主治医や理学療法士に相談してください。
「翌日に痛みや疲れを残さない」を運動量の目安に
運動量の調整基準として実践的なのが、「翌日に痛みや疲れを残さない程度」という目安です。運動をした翌日に痛みや疲れが持ち越すようであれば、次回は強度や時間を下げるサインと考えられます。 自己モニタリングの一例として、運動をした日と翌日の体調・痛みの様子を簡単に記録しておくと、自分に合った運動量の傾向がつかみやすくなります。「もっとやれる気がする日」と「翌日に響く日」を書き留めておくと、無理なく続けられる範囲が見えてきます。
やってはいけない運動・避けるべき過負荷
ダンベルなど強い負荷をかける運動、弾みをつける運動、痛みを我慢しての運動は、関節リウマチの方には推奨されません。単に禁止事項として捉えるのではなく、避けるべき理由を把握しておくことで、日常の判断がしやすくなります。
避けるべき運動と推奨される運動の対比
| 避けるべき運動 | 推奨される運動 |
|---|---|
| ダンベルなど強い負荷をかける運動 | 関節を大きく動かさない等尺性運動 |
| 弾みをつける運動 | 入浴後のストレッチや体操 |
| 痛みを我慢して続ける運動 | 水中運動や痛みのない範囲でのウォーキング |
ダンベルなど強い負荷をかける運動
日本リウマチ財団の情報によれば、鉄アレイ(ダンベル)を用いた過度な運動は、かえって関節破壊を進める恐れがあるとされています。「筋力を鍛えたほうが関節を守れるはず」と考えて負荷を上げすぎることは、リウマチの方の場合、逆効果になり得ます。 筋力を保つことは大切ですが、そのために推奨されているのは、関節への負担が少ない等尺性運動や、体重を利用した無理のない筋トレです。「重い負荷ほど効果的」という一般的な筋トレの発想を、そのままリウマチの運動に持ち込まないことが重要です。
弾みをつける運動・痛みを我慢した運動
弾みをつけて関節を大きく動かす運動や、痛みがあるのに我慢して続ける運動も、避けるべきものとして挙げられています。反動をつけたストレッチや、無理に力を入れた運動は、関節や周囲の組織に予想以上の負担をかけることがあります。 痛みは体からのサインです。「今日は痛みが出ているから休む」「動かしにくいから軽めに切り替える」といった判断を、都度行うことが大切です。
体重や状態によって見直したい点
体重が増えると、膝や股関節などの荷重関節にかかる負担も増えるため、体重管理も関節保護の一部と考えられています。極端なダイエットは体力を落とすため望ましくありませんが、無理のない範囲で適正体重を意識することは、関節への負担を減らすことにつながります。 体重や運動量の見直しは、自己判断だけで進めるのではなく、主治医や管理栄養士のアドバイスを受けながら組み立てていくと安全です。
関節を守りながら運動を続けるための工夫
関節を守りながら運動を続けるためには、①運動前に関節を温める、②無理のない量から始めて記録する、③装具や生活動作の工夫を組み合わせる、という3つの視点が役立ちます。運動を「単独の対策」としてではなく、関節保護全体の一部として位置づけるのが実践的です。
運動前に関節を温める・ウォームアップする
日本リウマチ財団の情報によれば、入浴後など関節を温めてから運動を行うと、関節が動きやすくなり、運動の効果も高まりやすくなります。冷えた状態で急に動かすより、温めてからのほうが痛みが出にくく、関節や筋を傷めるリスクも下がります。 朝一番の運動よりも、入浴後や体が温まった時間帯を選ぶだけでも、体感の違いが得られやすくなります。
無理のない量から始め、少しずつ・記録しながら
運動を新しく始めるときは、短時間・少回数からスタートするのが基本です。最初から無理をすると、翌日に痛みや疲れが残り、続けにくくなってしまいます。 体調や痛みの様子を簡単に記録しておくと、「どのくらいの運動量が自分に合っているか」の傾向が見えやすくなります。ノートやスマホのメモに、その日の運動内容と翌日の感覚を一行ずつ記録するだけでも十分です。
装具や生活動作の工夫も組み合わせる
運動だけに頼るのではなく、装具療法や日常動作の工夫を組み合わせることで、関節への負担をより減らすことができます。手首の装具や、指先を守るサポーターなど、関節の状態に応じた装具は主治医や理学療法士と相談して選びます。 日常生活では、「小さな関節より大きな関節を使う」という考え方が知られています。たとえば、荷物を指先だけで持たず腕全体で支える、瓶のフタを開けにくいときは道具を使うなど、日常のちょっとした工夫の積み重ねが関節を守ることにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q.関節リウマチでもウォーキングはしてよいですか?
痛みや腫れが落ち着いている時期であれば、軽い有酸素運動としてウォーキングは選択肢になります。ただし、痛みや腫れが強いときは控えることが基本です。距離や時間より、「翌日に痛みや疲れを残さない」ことを目安にしてください。
Q.毎日運動したほうがよいですか?
頻度そのものよりも、「翌日に痛みや疲れを残さない範囲」で続けることが優先されます。個人差が大きいため、自分に合った頻度・強度については主治医や理学療法士に相談しながら決めていくのが安全です。
Q.痛みが強い日は休んでもよいですか?
はい。痛み・腫れ・熱感が強いときは、運動量を減らし安静を優先して構いません。休むことも運動療法の一部と考えられています。休んだからといって、これまでの積み重ねがすぐに失われることはありません。
Q.運動メニューはどこで相談できますか?
自己判断だけで運動メニューを決めるのではなく、主治医や理学療法士に相談することをおすすめします。自分の病状や関節の状態に合った運動処方を受けることで、無理なく続けやすくなります。総合病院であれば、リハビリテーション科と連携した相談も可能です。
まとめ|自分に合った運動を主治医と相談しながら
関節リウマチの治療の柱の一つとして、運動療法(リハビリ)が位置づけられています。
運動には、関節の動き(可動域)を保つ、筋力を保つ、生活の質を維持する、という3つの効果があります。
痛みが落ち着いている時期には、等尺性運動・リウマチ体操・水中運動・軽い有酸素運動が選択肢です。
痛み・腫れ・熱感が強い急性炎症期には、運動量を減らし安静を優先します。
ダンベルなど強い負荷、弾みをつける運動、痛みを我慢した運動は避けます。
関節を温めてから運動する、無理のない量から始めて記録する、装具や日常動作の工夫を組み合わせることが、続けやすさにつながります。
運動の可否や強度は、必ず主治医・理学療法士と相談しながら決めてください。自分に合った運動を、無理のないペースで続けていくことが、日常生活の質を長く保つことにつながります。
参考文献
[1] 公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター「関節リウマチの治療 - リハビリテーション」
[2] 公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター「リウマチ体操」
[3] 一般社団法人日本リウマチ学会(JCR)「関節リウマチ ガイドライン」
[4] 一般社団法人日本リウマチ学会(JCR)「ガイドライン」
記事監修者
病院長
塚本 浩(つかもと ひろし)

所属学会
| 日本内科学会 | 総合内科専門医 指導医 |
|---|---|
| 日本リウマチ学会 | リウマチ専門医 指導医 |
| 日本プライマリ・ケア連合学会 | 認定医 指導医 |