変形性膝関節症のリハビリ完全ガイド|自宅でできる運動と禁忌・痛いときの注意
2026年9月4日

変形性膝関節症のリハビリ(運動療法)は、「大腿四頭筋の筋力強化・関節可動域訓練・有酸素運動・体重管理」を、痛みのない範囲で無理なく続けることが基本です。日本整形外科学会の診療ガイドライン2023を根拠に、自宅でできる運動の手順、やってはいけない動作、痛みが強いときの注意までを、新小倉病院 整形外科・リハビリテーション科監修で中立的に解説します。
この記事でわかることは次の3点です。
- 自宅でできる運動(大腿四頭筋セッティング・下肢挙上・可動域訓練・有酸素運動)の手順と目安
- やってはいけない運動と、痛みが強いときの中止・受診の判断
- 体重管理・装具の位置づけと、専門のリハビリ指導へ切り替える目安
変形性膝関節症のリハビリは保存療法の中心
変形性膝関節症のリハビリは、手術以外で症状と進行に向き合う「保存療法」の柱に位置づけられます。膝の軟骨そのものを元に戻すことはできないものの、運動療法によって膝を支える筋力を整え、関節の動きを保ち、体重を管理することで、痛みの軽減と生活動作の維持が期待できるからです。日本整形外科学会の診療ガイドライン2023でも、運動療法・体重管理・患者教育が保存療法の中心として推奨されています。本セクションでは、まず「なぜリハビリが中心なのか」という前提を整理し、リハビリで何を目指すのか、何ができて何ができないのかを確認していきます。
そもそもリハビリ(運動療法)で何を目指すのか
変形性膝関節症のリハビリで目指すのは、すり減った軟骨を元に戻すことではなく、痛みを和らげながら膝が支える生活動作を維持していくことです。膝の関節軟骨は一度すり減ると自然に再生することは期待できず、変形した骨の形そのものを運動で戻すこともできません。それでも、膝関節を支える筋力を高め、関節の動きを保ち整合性を高め、体重と動作の癖を見直すことで、膝にかかる負担を減らし、痛みのコントロールや歩行・立ち座りなどの生活動作の改善が期待できます。
「治す」ではなく、「うまく付き合いながら使い続ける」発想に切り替えることが、リハビリを長く続ける土台になります。完治をうたう運動法や器具には慎重になり、無理のない範囲で着実に続けられる方法を選ぶことが大切です。
ガイドラインが運動療法・体重管理・患者教育を推奨する理由
変形性膝関節症の保存療法の中心が「運動療法・体重管理・患者教育」である根拠は、日本整形外科学会の最新ガイドラインに示されています。
日本整形外科学会の変形性膝関節症診療ガイドライン2023によれば、保存療法の柱として運動療法、体重管理、患者教育が推奨されており、まず取り組むべき基本的な対応として位置づけられています。運動療法は、膝の痛みを和らげ、関節の機能や生活の質を改善するうえで有効性が示されている治療とされています。体重管理は、膝にかかる物理的な負担そのものを減らす介入として位置づけられ、患者教育は、病気の正しい理解とセルフケアの継続を支える土台と考えられています。
この3つはバラバラに行うのではなく、互いに補い合うものです。運動療法で筋力と関節の動きを整え、体重管理で膝への負担を減らし、患者教育で「自分の膝とどう付き合うか」を理解しながら続けることで、保存療法全体の効果が高まることが期待されます。
リハビリで期待できることと限界
リハビリで期待できることは、痛みの軽減、歩行や立ち座りなどの生活動作の維持・改善、進行のスピードを緩やかにすることです。膝を支える筋力が整い、関節の動きが保たれることで、階段や買い物といった日常の負担が軽くなる方は少なくありません。手術を回避できる、あるいは手術の時期を先送りできる可能性もあります。
一方で、リハビリには限界もあります。変形してしまった骨の形や、すり減った軟骨が運動で元の状態に戻ることはありません。リハビリの効果には個人差があり、すべての人に同じ結果を保証できるものでもありません。痛みの強さや生活背景によっては、運動療法だけでは十分な改善が得られず、薬物療法や注射、装具、手術といった他の選択肢を組み合わせる判断が必要になる場合もあります。
「すぐに痛みが消える」「軟骨が再生する」といった過度な期待は持たず、できることを着実に積み重ねる姿勢が、結果として効果的なリハビリにつながりやすくなります。

自宅でできる筋力強化|大腿四頭筋を中心に
自宅でできる筋力強化の中心は、太ももの前にある「大腿四頭筋」を、膝に体重をかけずに鍛える運動です。代表的なのが、膝を動かさずに筋肉だけを力ませる「セッティング」と、脚をまっすぐ持ち上げる「下肢挙上(SLR)」です。これらは床に座ったり寝たりした姿勢で行えるため、立ち上がるのがつらい時期でも始めやすく、膝関節への負担が少ない運動として広く取り入れられています。痛みの出ない範囲で、回数と頻度を少しずつ積み上げていくことが基本です。本セクションでは、なぜ大腿四頭筋が重要なのか、および自宅でできる代表的な2種目の手順と続け方を具体的に解説します。
大腿四頭筋がなぜ重要か
大腿四頭筋は、太ももの前面にある大きな筋肉で、膝を伸ばす動きと、立ったり歩いたりするときの膝の安定に深く関わっています。階段を下りるとき、立ち上がるとき、歩いているときなど、膝に体重がかかる場面で、大腿四頭筋は膝の関節を支えるクッションのような役割を果たしています。
この筋肉が弱ってくると、膝関節そのものに直接かかる負担が増え、痛みが出やすくなったり、変形が進みやすくなったりすると考えられています。逆に、大腿四頭筋を適切に鍛えることで、膝を「外から支える力」が補強され、関節への負担が和らぎ、痛みの軽減や歩行のしやすさにつながることが期待できます。
変形性膝関節症の運動療法で大腿四頭筋の強化が広く取り上げられるのは、こうした「膝を支える筋肉」としての役割が大きいためです。
膝を動かさない筋トレ(セッティング)の手順
セッティングは、膝を動かさずに大腿四頭筋だけを力ませる「等尺性運動」と呼ばれる筋トレで、膝への負担が少ない代表種目です。痛みが強い時期でも取り組みやすいため、運動療法の最初の一歩としてよく用いられます。
手順の目安は次のとおりです。
- 床またはベッドに仰向け、あるいはイスに浅く座る
- 鍛えたい側の膝の下に、丸めたタオルを置く
- 膝裏でタオルを床に押しつけるように、太ももの前に力を入れる
- そのまま5秒ほどキープしてから力を抜く
- 10回程度を1セットとし、1日数セットを目安に行う
力を入れたとき、太ももの前面が硬くなるのを手で触れて確認しながら行うと、正しく負荷がかかっているかが分かりやすくなります。
ポイント:力みすぎる必要はなく、太ももの前面が軽く硬くなる程度の中等度の力で十分とされています。呼吸を止めると血圧が上がりやすく、高齢の方や持病のある方では負担になる場合があるため、自然な呼吸を続けながら行うことが大切です。膝に痛みが出る場合は力の入れ方を弱め、それでも痛みが続くようなら中止して様子を見ます。
下肢挙上(SLR)の手順
下肢挙上(SLR)は、脚をまっすぐ伸ばしたまま床から持ち上げる運動で、大腿四頭筋を中心に、太ももや股関節周りの筋肉をまとめて鍛えられる代表種目です。膝そのものは動かさず、股関節の動きで脚を持ち上げるため、膝関節への負担が少ない点が特徴とされています。
手順の目安は次のとおりです。
- 仰向けに寝て、鍛えない側の膝を立てる
- 鍛える側の脚は膝を伸ばしたままにする
- つま先を天井に向けるように軽く反らせる
- 膝を伸ばしたまま、脚をゆっくり床から20〜30cmほど持ち上げる
- その位置で5秒ほどキープし、ゆっくり床に下ろす
- 10回程度を1セットとし、左右両側を1日数セット行う
ポイント:勢いをつけて脚を振り上げると、効果が弱まるだけでなく、腰や股関節を痛める原因になることがあります。ゆっくり挙げて、ゆっくり下ろす動きを意識すると、筋肉に負荷が伝わりやすく安全です。腰が反って痛みが出る場合は、反対側の膝を立てる角度を深くするか、回数を減らして調整します。
どれくらいの頻度・期間続けるとよいか
セッティングや下肢挙上は、毎日数セットずつ、痛みのない範囲で続けていくのが基本です。一般的には、週3〜5回以上の頻度で、最低でも数週間から数か月続けることで、筋力や痛みの変化が感じられるようになるとされています。1〜2日行っただけで効果を判断するのは早く、まずは「無理なく続ける」ことを最優先に考えます。
ただし、適切な強度や頻度は、膝の状態、年齢、生活背景、他の病気の有無などによって変わります。医師や理学療法士から具体的な指示が出ている場合は、その指示を最優先してください。痛みが強くなる、腫れが出る、翌日まで疲労感が残るといった場合は、回数や頻度を見直すサインです。

関節可動域訓練とストレッチ|膝の動きを保つ
関節可動域訓練とストレッチは、膝の曲げ伸ばしの範囲を保ち、こわばりを防ぐためのリハビリです。膝の動きが狭くなると、立ち上がりや階段、しゃがむといった生活動作がしづらくなり、結果として痛みやふらつきの原因にもなります。可動域訓練やストレッチは、膝の動きを少しずつ取り戻す穏やかな運動で、筋力強化と組み合わせることで効果が高まると考えられています。ポイントは、痛みが出る角度の手前で止めること、反動をつけないことの2つです。本セクションでは、自宅で安全に取り組める代表的な方法と、行う際の注意点を解説します。
イスに座って行う膝の曲げ伸ばし
座って行う膝の曲げ伸ばしは、立位よりも体重の負担が少なく、可動域訓練として取り組みやすい運動です。膝の動きが固くなっていると感じる方や、立位での運動が不安な方の入り口としても適しています。
手順の目安は次のとおりです。
- 背もたれのあるイスに深く腰掛け、両足を床につける
- 片方の脚を、ゆっくりと床と平行になるまで持ち上げる
- つま先まで意識を通して、膝を伸ばしきる手前で2〜3秒キープする
- ゆっくり元の位置に戻す
- 左右交互に、各10回程度を1日数セット行う
膝が完全に伸びきらない場合でも、痛みのない範囲で「気持ちよく伸びる」と感じるところまでで十分です。「もう少し」と無理に伸ばそうとすると、かえって痛みが強くなることがあります。
太もも・ふくらはぎのストレッチ
膝の動きには、膝そのものだけでなく、太ももの裏側(ハムストリングス)やふくらはぎの柔軟性も関わっています。これらの筋肉が硬くなると、膝が伸びにくくなったり、歩行のリズムが崩れたりすることがあるため、合わせてストレッチを行うことが望ましいとされています。
代表的なストレッチは次のとおりです。
- 太もも裏のストレッチ:床に座って片脚を前に伸ばし、つま先に手を伸ばすように上体をゆっくり前に倒す
- ふくらはぎのストレッチ:壁に手をつき、片脚を後ろに引いてかかとを床につけたまま、ゆっくり体重を前に移す
- 太もも前のストレッチ:壁などに手を添えて立ち、片方の足首を後ろから手で持ち、かかとをお尻に近づける
いずれも、痛気持ちよいと感じる程度で20〜30秒ほどキープし、左右2〜3回ずつを目安に行います。反動をつけたり、息を止めたりせず、ゆっくり呼吸しながら行うことが大切です。
ストレッチ・可動域訓練を行うときの注意
ストレッチや可動域訓練は、行うタイミングと強さによって効果も負担も変わります。一般的に、体が温まっている入浴後や、軽い運動のあとは筋肉がほぐれやすく、無理なく可動域を広げやすいタイミングとされています。冷えた状態でいきなり強く伸ばすと、筋肉や腱を痛める原因になります。
次のような場合は、無理をせず中止することが望ましいでしょう。
- 鋭い痛みや、ピリッとした神経のような痛みが出る
- 膝に熱感や腫れがあり、いつもより不快感が強い
- ストレッチ後に膝の動きが悪くなったり、痛みが翌日まで残る
可動域訓練は「広げにいく」のではなく、「戻ってきた動きを失わないように保つ」イメージで取り組むと、安全に続けやすくなります。
有酸素運動と体重管理|膝への負担を軽くする
有酸素運動と体重管理は、変形性膝関節症のリハビリで「膝への負担そのものを減らす」役割を担います。歩行時の膝関節には、体重の数倍もの力がかかると考えられており、わずかな減量であっても、膝への負担を軽減できる可能性があります。一方で、極端な食事制限は筋力低下を招き、かえって膝を不安定にします。膝にやさしい有酸素運動で全身の代謝を整えながら、適切なペースで体重を管理することが、長期的に膝を守る現実的な戦略です。本セクションでは、ウォーキング、水中運動、自転車といった代表的な選択肢と、減量がもたらす膝負担の変化について解説します。
ウォーキング|どれくらいが目安か
ウォーキングは、特別な道具を必要とせず、生活に取り入れやすい有酸素運動です。膝に痛みがあると「歩かないほうがよいのでは」と感じる方もいますが、痛みが翌日まで残らない範囲のウォーキングは、膝を支える筋肉の活動と全身の血流を保つうえで有用と考えられています。
無理のない量の目安は次のとおりです。
- 1回あたり:20〜30分程度から
- 頻度:週3〜5回程度
- ペース:会話ができる程度のゆったりした速度
最初から長距離を歩く必要はありません。10分の散歩を1日2回に分けるなど、生活リズムに合わせて分散させても問題はありません。歩いたあとに膝の痛みが強くなったり、腫れが出る場合は時間と距離を短くし、それでも痛みが続くようなら中止して様子を見ます。クッション性のある運動靴を選び、舗装された平らな道を歩くと、膝への負担をさらに減らせます。
水中運動・自転車(エルゴメーター)|膝にやさしい選択肢
膝の痛みでウォーキングがつらいときは、膝への衝撃が少ない有酸素運動を選ぶとよいでしょう。水中運動と自転車(エルゴメーター)は、膝への負担を抑えながら全身を動かせる代表的な選択肢です。
それぞれの特徴は次のとおりです。
- 水中ウォーキング:浮力で体重の負担が大幅に軽くなり、関節への衝撃を抑えながら歩ける
- 自転車(エルゴメーター):サドルに体重を預けるため膝への荷重が少なく、漕ぐ動きで脚の筋肉を使える
自転車は、サドルをやや高めに調整し、膝を深く曲げすぎないようにすると、膝への負担をさらに減らせます。負荷は軽めから始め、息が弾むけれど会話はできる程度の強さを目安にします。
ポイント:水中運動では、水中ウォーキングや平泳ぎの足の動きを用いた緩やかな動作は、浮力によって衝撃が和らぐため、膝への負担が少ない選択肢の一つとされています。一方、クロールのバタ足のように膝を素早く強く動かす動きや、深いキックは膝への負担が大きくなる場合があります。水泳に取り組む場合は、無理のない泳法や水中歩行を中心にし、膝の調子をみながら選ぶことが現実的です。
体重1kgの減量で膝への負担はどれくらい変わるか
体重と膝への負担の関係は、変形性膝関節症と向き合ううえで重要なポイントです。歩行時には、膝関節に体重の数倍の力がかかるとされ、階段の昇降や走る動きではさらに大きな負担がかかります。そのため、体重がわずかに増減するだけでも、膝にかかる負担には影響が生じると考えられています。
たとえば、歩行で膝にかかる負担が体重の3倍と仮定すると、体重を1kg減らすことは、歩行のたびに膝にかかる力を3kg分減らすことに相当します。1日に数千歩歩く生活では、この差が積み重なって大きな違いになっていきます。
ただし、減量を急ぎすぎると筋力低下を招き、膝の安定がかえって失われる恐れがあります。日本理学療法士協会のハンドブック等でも、運動と食事の両面からゆるやかに体重を整えることが望ましいとされています。極端な食事制限ではなく、有酸素運動と筋力強化を組み合わせ、月に1〜2kg程度を目安にゆっくり減量していく考え方が現実的です。

やってはいけない運動・動作と痛いときの注意
やってはいけない運動と痛いときの注意は、変形性膝関節症のリハビリにおいて重要な要素です。良い運動を続けることと同じくらい、膝に負担をかけすぎる動作を避けることが、悪化を防ぎ、リハビリを長く続ける土台になります。深く膝を曲げる動作、強い衝撃のかかる運動、痛みを我慢して行う運動は、避けたほうがよい代表例です。同時に、運動中や運動後に強い痛みや腫れが出たときの中止判断と、整形外科を受診する目安をあらかじめ知っておくことで、悪化のリスクを下げられます。本セクションでは、避けたい運動・動作と、痛みが強いときの判断軸を整理します。
避けたほうがよい運動・動作
膝への負担が大きく、変形性膝関節症の方には避けたほうがよいとされる代表的な運動・動作には、次のようなものがあります。
- ランニング・ジョギング:着地のたびに膝に強い衝撃が繰り返し加わる
- 深く膝を曲げるスクワットや深屈伸:膝の関節面への圧力が大きくなりやすい
- 正座・しゃがみ込み:膝が深く曲がり、関節への負担が高い姿勢が続く
- 和式トイレや床からの立ち座り:深い屈伸を伴うため、痛みのきっかけになりやすい
- 急な階段の昇り降り:とくに下りは膝にかかる荷重が大きくなる
- 重い荷物を持ち続ける動作:膝にかかる体重そのものが増える
これらの動作はすべてを完全に禁止する必要はありませんが、痛みが強い時期は意識して避け、症状が落ち着いている時期も頻度を減らすことが望ましいでしょう。和式トイレは洋式に切り替える、低い椅子は避ける、階段ではエレベーターや手すりを併用するなど、生活環境を整えることで自然に負担を減らせます。
大腿四頭筋だけに偏らないバランスの大切さ
大腿四頭筋の強化は、変形性膝関節症のリハビリでとても重要ですが、そこだけに偏ると、かえって膝周りの筋肉バランスが崩れるおそれがあります。膝は、太ももの前だけでなく、裏側のハムストリングス、お尻の中殿筋、ふくらはぎ、体幹など、複数の筋肉と関節の連動で支えられているからです。
太もも前の筋肉ばかりが強くなると、膝の前面に引っ張る力が偏り、関節の動きや姿勢のバランスが崩れる場合があります。そのため、大腿四頭筋のセッティングや下肢挙上を中心としつつ、ハムストリングスやお尻の筋肉、可動域訓練、有酸素運動を組み合わせて、全身でバランスよく膝を支える発想が望ましいでしょう。可動域訓練やストレッチを並行することで、関節の動きを保ちながら筋力を高めていけます。
痛みが強いときの中止判断
「痛みを我慢して運動を続けてよいのか」は、多くの方が悩むポイントです。一般的には、次のような痛みが出たときは、いったん運動を中止して様子を見るのが安全です。
- 運動中にズキッとした鋭い痛みが走る
- 運動を始めて痛みが時間とともに強くなっていく
- 運動後しばらく経っても痛みが引かない
- 翌日になっても痛みや疲労感が残っている
- 膝が腫れている、熱を持っている、触ると熱い
軽い違和感や、運動中だけ感じる軽度の張り感は、必ずしも中止のサインではありませんが、無理に追い込むことは避け、少し回数を減らす、強度を落とすといった調整が現実的です。痛みが落ち着いたら、強度を1段階下げた状態から再開し、徐々に元の量に戻していきます。
痛み・腫れがあるときの一般的な対処
膝に腫れや熱感がある急性期は、運動を一時的に控え、安静と冷却で炎症を落ち着かせるのが一般的な対処です。腫れている状態で無理に動かすと、症状が長引いたり、痛みが強くなったりすることがあります。
冷却(アイシング)の一般的な目安は次のとおりです。
- 保冷剤や氷のうをタオルで包み、直接肌に当てないようにする
- 1回あたり10〜15分程度を目安に冷やす
- 1〜2時間ほど間を空けてから繰り返す
ポイント:冷却は長く続けるほど効果があるわけではなく、長時間連続して冷やし続けると、皮膚や皮下組織が傷み、凍傷のような状態になる場合があります。短時間にとどめ、間隔を空けて行うことが安全で、感覚がなくなる前に外すのが一般的です。冷却後は、膝の状態を見ながら、少しずつ可動域訓練など穏やかな動きを再開していきます。
こんなときは整形外科の受診を
セルフケアで様子を見るのが難しい状態のときは、自己判断で運動を続けず、整形外科の受診を検討する目安があります。次のような症状があるときは、なるべく早めに医療機関に相談することが望ましいでしょう。
- 急に強い腫れや熱感が出てきた
- 体重をかけられない、歩くのが極端につらい
- 夜間や安静時にも強い痛みが続く
- 数週間以上、痛みが改善しないか、徐々に悪化している
- 膝がカクッと崩れる、ロックされて動かない感覚がある
- 発熱を伴う膝の腫れがある
これらは、変形性膝関節症以外の病気や、関節内の炎症など別の要因が関わっている可能性もあります。早い段階で診察と画像評価を受けることで、原因に合った治療やリハビリにつなげやすくなります。

装具・サポーターの位置づけ
装具やサポーターは、変形性膝関節症のリハビリにおいて、運動療法を補助する役割を担います。膝のぐらつきを抑えて歩きやすくしたり、痛みが強い時期に外出をしやすくする一助になりますが、サポーターそのものが軟骨や変形を治すわけではありません。常に頼り切ると、膝周りの筋力低下を招くおそれもあり、運動療法との併用を前提に「いつ、どう使うか」を選ぶ視点が重要です。本セクションでは、サポーターの役割と、使うときの考え方を中立的に整理します。
サポーターは何のために使うのか
膝のサポーターには、主に次のような役割があると考えられています。
- 膝のぐらつきや不安定感を和らげる
- 関節を保温し、動きやすさを助ける
- 動作時の不安を軽減し、外出や運動に取り組みやすくする
たとえば、痛みが残っていて長時間の歩行が不安なときや、買い物や旅行など普段より歩く量が増える日に装着することで、膝への安心感が増し、活動量を保ちやすくなります。
ただし、サポーターは膝関節そのものを治すものではありません。商品によって設計の方向性が異なり、軽い保温目的のものから、しっかり固定するタイプまで幅があります。商品名や宣伝文句だけで選ぶのではなく、自分の症状や生活シーンに合った種類を、医師や理学療法士に相談しながら選ぶことが望ましいでしょう。本記事では特定商品の推奨は行いません。
使いすぎに注意|運動療法との併用が前提
サポーターは便利な道具ですが、常に装着し続けることには注意が必要です。膝の安定をサポーターに任せきりにすると、本来膝を支えるべき周りの筋肉が使われにくくなり、長期的にはかえって筋力低下を招くおそれがあります。
望ましい使い方の考え方は次のとおりです。
- 痛みが強い時期や、歩く距離が長い日など、必要な場面に絞って使う
- 自宅でゆっくり過ごす時間や、運動療法を行う時間は外して、自分の筋肉で膝を支える練習をする
- サポーターを使いながらでも、セッティングや可動域訓練など、運動療法は並行して続ける
具体的にどのタイプの装具・サポーターが合うかや、装着する時間帯の目安は、膝の状態や生活パターンによって異なります。気になる場合は、整形外科やリハビリテーション科を受診し、医師や理学療法士に相談したうえで選ぶと安心です。
自宅でのセルフリハビリと専門指導の使い分け
自宅でのセルフリハビリと専門指導は、対立するものではなく、組み合わせることで効果が高まる関係にあります。基本的な運動メニューは自宅で続けながら、フォームや強度に不安があるとき、一定期間続けても改善が乏しいとき、手術の前後などは、整形外科・リハビリテーション科で専門のリハビリ指導を受けることが現実的な選択になります。総合病院では、医師の診察と画像評価で重症度を確認したうえで、理学療法士による個別の運動指導を組み合わせられるため、より一人ひとりの状態に合わせたアプローチが期待できます。本セクションでは、自宅で続けやすくする工夫と、専門指導が役立つサインを整理します。
自宅で運動を続けやすくする工夫
リハビリは、回数や強度よりも「続けられること」が結果を大きく左右します。自宅で続けやすくする工夫として、次のような方法が役立ちます。
- 運動の時間帯を生活リズムに組み込む:朝起きてすぐ、入浴後、寝る前など、毎日同じタイミングに固定する
- 家族と一緒に取り組む:声をかけ合うことで継続しやすくなる
- 記録をつける:カレンダーやアプリに「○」をつけるだけでも続いていることが見える化される
- 完璧を目指さない:忙しい日や体調が優れない日は、回数を減らしても続けることを優先する
- 環境を整える:ヨガマットやタオルを目につく場所に置いておく
最初から完璧な習慣をつくろうとせず、「短時間でもいいから続ける」発想で取り組むと、結果として長く続けやすくなります。痛みが強い日は、無理をせず可動域訓練や軽いストレッチだけにとどめる柔軟さも大切です。
専門のリハビリ指導が役立つサイン
次のようなときは、自宅でのセルフリハビリだけに頼らず、整形外科・リハビリテーション科で専門の指導を受けることを検討するとよいでしょう。
- 数か月続けても、痛みや動きにほとんど変化を感じない
- 痛みが徐々に強くなっている、活動範囲が狭くなってきた
- セッティングや下肢挙上が「効いている感じ」がしない、フォームに自信がない
- 持病があり、運動の強度や種目選びに迷いがある
- 手術を予定している、または手術後でリハビリの方向性が分からない
- 仕事や家事の動作で膝の使い方に不安がある
理学療法士による評価では、膝だけでなく股関節や体幹、歩き方の癖など全身のバランスを見たうえで、その方に合った運動メニューを組み立てます。フォームの誤りを早めに修正できるため、自己流で続けるよりも安全に、かつ効率よく効果を引き出せます。
整形外科・リハビリテーション科で受けられること
総合病院の整形外科・リハビリテーション科では、変形性膝関節症の保存療法を体系的に受けられる体制が整っています。受けられる主な評価・指導の例には、次のようなものがあります。
- 医師の診察と問診による症状の確認
- レントゲンやMRIなどの画像評価による重症度の確認
- 必要に応じた薬物療法・注射などの治療選択肢の検討
- 理学療法士による筋力・可動域・歩行の評価
- 個別の運動指導と、自宅でのホームエクササイズ提案
- 装具・サポーター・インソールに関する相談
- 手術が必要な場合の手術計画と、術前・術後のリハビリ
国家公務員共済組合連合会 新小倉病院では、整形外科とリハビリテーション科が連携し、診断から保存療法、必要な場合の手術と術後リハビリまでを一貫して提供しています。「自宅で続けてみたが手応えが感じられない」「自分の膝に合った方法が知りたい」と感じたタイミングで、いちど受診を検討してみるとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 変形がかなり進んでしまった末期の状態でも、リハビリは効果がありますか?
A.変形が進んだ状態でも、リハビリで完全に元の膝に戻すことはできませんが、痛みの軽減や日常動作の維持には一定の効果が期待できます。膝を支える筋力を整え、可動域を保つことで、歩行や立ち座りが楽になる方もいます。同時に、手術が必要な状態である可能性もあるため、自己判断せず整形外科で評価を受け、リハビリと他の治療の組み合わせを相談することが大切です。
Q. ウォーキング中に膝が痛くなった場合、その日の運動はすぐに中止すべきですか?
A.鋭い痛みや、歩くたびに強くなる痛みが出たときは、その日のウォーキングはいったん中止して様子を見ることが望ましいでしょう。軽い違和感程度であれば、ペースを落としたり、短く休んでから様子を見て続けてもかまいませんが、無理は禁物です。翌日まで痛みや腫れが残るようなら、距離や頻度を見直し、それでも続くときは整形外科に相談してください。
Q. サポーターをつけたまま筋トレやストレッチを行っても効果はありますか?
A.痛みが強い時期や不安が大きいときに、サポーターをつけたまま筋トレやストレッチを行うこと自体は問題ありません。安心して取り組めることで、運動を継続しやすくなる利点もあります。ただし、常に装着し続けると膝周りの筋肉が使われにくくなるおそれがあるため、調子のよい時間帯は外して行う日も設け、最終的には自分の筋肉で支えられる状態を目指すことが望ましいでしょう。
Q. サプリメント(グルコサミンなど)は効果がありますか?
A.グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントについては、現時点で変形性膝関節症の痛みや進行に対する効果のエビデンスは限定的であり、診療ガイドラインでも推奨度は高くないとされています。試すこと自体を妨げるものではありませんが、サプリメントだけに頼るのではなく、運動療法と体重管理を中心にしたリハビリを基本に据えることが現実的です。気になる場合は主治医に相談しましょう。
Q. 持病(糖尿病・心疾患など)がある場合の注意は?
A.糖尿病、高血圧、心疾患、骨粗鬆症などの持病がある方は、運動を始める前にかかりつけ医に相談し、運動の強度や種目について確認しておくと安心です。血糖や血圧の状態、心臓の状態、骨の強度などによって、適した運動の量や禁止される動きが変わる場合があります。整形外科とかかりつけ医の双方に情報を共有しながら、安全な範囲で運動療法に取り組んでください。
まとめ|今日から始める変形性膝関節症のリハビリ
- リハビリ(運動療法)は保存療法の中心です。大腿四頭筋強化・可動域訓練・有酸素運動・体重管理を、痛みのない範囲で無理なく続けることが基本になります。
- 膝を動かさない筋トレ(セッティング)や下肢挙上から始め、痛みが翌日まで残らない強度を守って継続しましょう。
- 深屈伸・ランニング・正座などは避けたほうがよく、痛みが強いときは中止し、整形外科の受診目安を確認することが大切です。
- サポーターは補助として使い分け、体重管理と合わせて膝の負担を軽くしていきましょう。
- 一定期間セルフで改善が乏しいときや手術前後は、整形外科・リハビリテーション科で評価と個別指導を受けることが、安心への近道です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状や運動の可否、強度については整形外科医・理学療法士にご相談ください。
監修
国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 整形外科・リハビリテーション科
参考文献
[1] 変形性膝関節症診療ガイドライン2023 策定組織(PDF)
[2] 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(Mindsガイドラインライブラリ)
記事監修者
診療部長
森 俊陽(もり としはる)

所属学会
| 日本整形外科学会 | 専門医 |
|---|---|
| 日本体育協会 | 公認スポーツドクター |
| 日本股関節学会 | |
| 日本人工関節学会 | |
| 日本小児整形外科学会 | |
| 日本リウマチ学会 | |
| 日本足の外科学会 | |
| 日本臨床バイオメカニクス学会 | |
| 日本臨床スポーツ学会 |